「大麻」とは「大いなる麻」の略語です。良質の繊維や油が取れ、医療分野でも活用が期待されています。

3月8日レジュメ

中山大麻裁判

本件は、2011年11月29日、麻文化研究者であり大麻草検証委員会(本会)の幹事である中山康直氏が、東京都大島町に所在する本人自宅において大麻取締法違反容疑により逮捕された事件です。
被告人は、法廷において無罪を主張しています。

被 告 人    中山 康直
弁 護 団
 主任弁護人  丸井 英弘
 弁護人    森山 大樹


中山康直氏は、なぜ逮捕されたのか

2011年12月20日に東京地方検察庁 検察官 検事 菅井健二氏により作成された起訴状によると、中山康直氏が逮捕され起訴された事由は下記の通りです。

『被告人はみだりに、大麻を含有する乾燥植物片約27.509グラムを所持したものである。』


初公判において、何が問題にされたのか

この検察官の主張に対して、2012年2月7日に行われた初公判(第1回目の公判)において弁護団側は、以下の点について不明部分を問いました。(求釈明)

1.「みだりに」の意味を明らかにされたい。中山氏の大麻草所持について社会通念上正当な理由が認められないのであれば、その具体的な理由を明らかにしていただきたい。

2. 大麻取締法第1条で禁止されているのは「大麻(カンナビス・サティバ・エル)」であり、「大麻を含有する乾燥植物片」とは、いったい何を言っているのか意味がわからない。

3. 大麻取締法の保護法益(法律が保護、実現しようとしている利益)は「国民の保健衛生の保護」とされているが、中山氏が今回所持したことで具体的にどのような侵害があったのか明らかにしていただきたい。

これらの弁護団側からの問いに対して、第1回公判の中では検察官側からは明確な回答が示されませんでした。


違法捜査の実態について

中山大麻裁判第1回公判の中で、弁護団は本件捜査過程における違法捜査および訴因不特定(犯罪の具体的事実が特定されていないこと)を指摘し、以って裁判所に対して公訴棄却の申立てを行いました。
弁護団が指摘した違法捜査の内容は下記の通りです。

1. 捜索差押許可状の請求に重大な違法がありました。

2. 捜索差押許可状の呈示に違法がありました。

3. やむおえない事由なく不当な勾留延長を実行しました。

4. 捜査担当検察官は一度も中山氏の取調べをしませんでした。

結論として、本件公訴提起は公訴権の濫用がありました。

検察官は公益の代表者であり、かつ国民全体の奉仕者です。
よって、検察官は国民の常識にかなう適正妥当な検察権行使により、国民が納得する良識ある検察を実現しなければならないという義務を負うものといえます。
捜査担当検察官は一度も中山氏の取調べをせずに先に述べた数々の違法を放置したまま漫然と公訴提起をしています。
検察のあり方が問われている現在において、捜査担当検察官が担当する事件の被疑者を一度も取調べしないで顔も見ないまま公訴提起をするということは、検察権の行使として国民は納得しません。
また、捜査過程の違法が放置されたままであったのは、捜査担当検察官が真剣に本件事件と向き合っていなかったからです。
したがって、一度も被疑者の取調べを行わずに漫然と数々の違法を放置して公訴提起をすることは、国民の常識にかなう適正妥当な検察権行使とはいえず公訴権の濫用にあたるというべきです。


大麻取締法の保護法益についての議論

中山大麻裁判第1回公判の中で、弁護団は大麻取締法の保護法益(法律が保護、実現しようとしている利益)とされている「国民の保健衛生の保護」について、以下のように申し立てを行いました。
以下が求釈明申立書の内容(抜粋)です。

大麻草が人体に与える影響について

市民生活において最も尊重されなければならない価値は、個人の生命・身体・財産であり、また思想・表現・趣味・嗜好の自由である。
これらは基本的人権として、近代憲法の中心的内容となっている。

ところで刑事犯罪とは、その違反者に対して、身体的自由を制約し、経済的不利益、社会的地位の剥脱を科するものであるので、それを科される者にとっては人権侵害そのものである。
従って市民に対して刑事罰を課するには、具体的な社会的被害が立証されている場合に限定されなければならない。

本年1月28日付け朝日新聞によるとたばこの喫煙を原因でガンで亡くなった大人の日本人は2007年に約12万9000人であるとのことである。
とすれば、ニコチンタバコの弊害は明らかであり、「国民の保健衛生の侵害」になっているのにかかわらず、ニコチンタバコの規制は、極めて軽いのである。

また、酒に対する規制は、以下の通りであり、これらニコチンタバコや酒に比較して大麻草に対する規制は極めて過酷であり、憲法第13条・14条の趣旨に違反するものである。

① 未成年者飲酒禁止法 …第一条、第二条、第三条
② 未成年者喫煙禁止法 …第一条、第二条、第三条、第四条、第五条、第六条
③ 酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止に関する法律 …第四条1項
(※条文内容は省略)

判例タイムズNo.369の424頁の大麻取締法違反事件の判例解説で、次のように述べていますので参考にしていただきたい。

「我が大麻取締法はいわゆる占領軍立法の一つであるが、昭和38年(法108)になって、従来の3年以下の懲役又は3万円以下の罰金という比較的ゆるやかな罰則が、選択刑としての罰金が廃止され、懲役刑も重くなって、5年以下の懲役という比較的きびしい刑罰に改正された。大麻に従来考えられていたような強い有害性は認められないと考えられている現在、なおこのような懲役刑のみを以て処罰する立法を維持することが賢明であるかは疑問の存するところである。」


日本人の文化的背景

大麻草とは、縄文時代の古来より衣料用・食料用・紙用・住居用・燃料用・医療用・祭事用・神事用に使われ、日本人に親しまれてきた麻のことであり、第二次大戦前はその栽培が国家によって奨励されてきた重要な植物である。

伊勢神宮のお札のことを神宮大麻というが、大麻は天照大神——つまり太陽——の御印とされている。そして、日本の国旗の日の丸は太陽のことであるから大麻草は日の丸つまり日本の象徴ともいえるのである。
そして、大麻草は神道において罪穢れを祓うものとされており、大和魂ともいわれている。なお、最近入手した千葉県成田市に鎮座している別添の麻賀多神社の由来によれば次のように述べている。
「この神社の社紋は麻の葉をデザインされており、最近まで赤ちゃんの産着(ゆぶき)に麻の葉を入れて健やかなる成長を祈願しており、お子様の守り神でも在らせられます。」

また、大麻が方除・厄除・開運の神様として祀られている四国徳島県大麻町にある阿波一宮 大麻比古神社 の御神体である「大麻さま」を現した「お起上りだるま」の別添の口上で次のように述べている。
       口上
「大麻さま」は方除・厄除・開運の神様であります。不浄、悪魔祓をして新しい元気をとり戻して再び起上るしるしとして古くから参拝者に授与しているのがこの「お起上りだるま」であります。

阿波一宮 大麻比古神社

以上のように、大麻草は、有害なものとして取り締まる植物ではなく、逆に有益かつ神聖な植物である。このような大麻草の所持を刑事罰で取り締まる根拠を具体的に明きからにしていただきたい。


弁護人は、中山康直氏の無罪を主張しました。

第1回公判の中で、弁護人は、以下のように罪状認否(公訴事実を認めるかどうかについて行う答弁) を行い、中山氏の無罪を主張しました。

「みだりに」の部分は否認ないし争う

植村立郎編「注解特別刑法5-Ⅱ医事・薬事編(2)[第2版]Ⅶ大麻取締法」25ページおよび45ページによると、「大麻取締法10条1,2,4項からして、大麻取扱者であった者、大麻取扱者の相続人または清算人が大麻を廃棄するまでの間、および相続人または清算人が大麻取扱者免許の申請をしてその免許を受けるまでの間は大麻を所持することができるものと解する。」とされている。

今回のケースでは、中山氏は1997年に静岡県において大麻栽培者の免許を取得してから6年間、大麻取扱者として産業用大麻の調査研究を行っていた。その後は場所を変えて伊豆大島で栽培者免許を取得するため免許をいったん静岡県に返納した。
伊豆大島で栽培者免許を取得しても、産業用大麻の種子がなければ調査研究を続けることは困難であるため、必要最小限の範囲で種子を保存するために大麻を所持したのである。
したがって、大麻所持が許されるべき正当な事由があったといえる。

※中山康直氏は2012年2月24日、東京都知事に対して「大麻栽培者免許不許可処分無効確認請求事件」という行政訴訟を起こしました。この時点から、中山氏は大麻取締法をめぐって被告・原告双方の立場で法廷で争う事になりました。 

大麻取締法24条第1項は憲法違反、および条約違反である

憲法14条1項違反(法の制定において平等)
アルコールの有害性は公知の事実であるにも関わらず成人以上の者に何ら制限されていない。
過去の判例が認定する大麻の有害性は自動車運転に対する影響のみであり人体に対する大麻の影響はアルコールと大差は無いにも関わらずアルコールと比較して懲役刑という重い刑罰を科している。

憲法31条、36条違反(適正手続)
大麻の有害性は低いことが近年の研究で明らかになっている。また、大麻の使用罪が規定されておらず、所持罪しか規定されていないことからすると、大麻を所持すること自体に何の有害性があるのかが議論されるべきである。

憲法22条違反(職業選択の自由)
産業用大麻の免許を申請して受けるまでの間、最低限種子を保存する目的で大麻を所持した場合に所持罪を適用するのは違憲である。
産業用大麻の種子を廃棄する期間というのは存在していない。行政が栽培者の新規参入をほとんど認めていないという事実があり、なおかつ栽培者に種子の譲渡を禁じていることから、中山氏が種子を保存する目的で必要最小限の大麻を所持するのは職業遂行のために必須だった。

麻薬に関する単一条約違反
1961年の麻薬に関する単一条約28条2項では、「もっぱら産業上の目的(繊維及び種子に関する場合に限る)又は園芸上の目的のための大麻植物の栽培には適応しない。」と規定している。
また同条約前文で「人類の健康および福祉」と制定目的としていることからすると、同条約と大麻取締法は制定目的が同一である。
上位法では禁止しないと規定している事を、大麻取締法で禁止しているのは無効である。


結語

この裁判は、大麻取締法の違憲性と、大麻をみだりに所持してはいないという事実を明確にする裁判である。


中山康直 プロフィール

麻文化研究者、有限会社縄文エネルギー研究所代表

1964年 静岡県浜岡町生まれ
     環境問題に関心があり、原発問題に関わる。
1997年 戦後、民間人として初めて大麻取扱者免許を取得、6年間、大麻の栽培、研究に従事
     する。
2000年 米国大麻研究者と共同研究を行う。
2001年 有限会社縄文エネルギー研究所を設立し、麻製品の開発、販売業務を行う。
2002年 ヘンプカープロジェクト、大麻草の種子油を燃料とした車で日本縦断に従事し、実行
     委員長及び運転手を務める。
2009年 医学書院の公衆衛生に「大麻と日本人の生活」と題して論文を発表。
2011年 東日本大震災後、被災地を訪れ、麻産業の必要性を確信。ヘンプカープロジェクトを
     北海道及び東海で実施。講師兼運転手を務める。

「麻ことのはなし」(評言社)ほか著書多数。

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